インドの流通を近代化から阻む伝統的零細商店「キラナ」は高所得者層にも人気

India Brand Equity Foundationによると、2018年までに、インドの小売市場は9,500億ドル規模に達し、年率13%の速度で成長するという。

これは2020年には1.1兆ドル規模に達すると見られている。しかし、この小売市場のおよそ92%は伝統的な商店で占められており、近代的な小売店は8%に過ぎない。もちろん、成長速度は近代的な小売店の方が早く、年率20%で成長、伝統的小売店の年平均成長率は9%であるが、その構成が逆転するにはまだまだ年月が必要そうである。(出典:IBEF https://www.ibef.org/industry/retail-india.aspx

筆者は2018年5月、インドのムンバイを訪問し、通常の近代的な小売店のみならず、最新のおしゃれな小売店、そして伝統的な小売店であるキラナを訪れた。
ムンバイの高級住宅街に足を踏み入れたが、そこには「近代的小売店はほとんどない」という。土地が余っていないことだけではなく、キラナの店主がその家族を誰より良く知っており、必要な品物をかゆいものに手の届く形でおすすめするのだという。

新製品が出ても、その家族に必要そうかどうかでおすすめしたりするのだといい、その信頼感は抜群だという。長年の信頼関係から「つけ払い」も効くし、少量からでも運んでくれる。もちろん、こうした零細な小売業「キラナ」が保護政策で守られていることにもよるが、近代的な小売店がこうしたキラナを駆逐できないのには訳があるようである。

インドのおしゃれな小売店

インドのおしゃれな小売店

 

3月に初めて日本を訪問したインド人の知人曰く、「日本で連れて行ってもらったDean & Delucaに似てない?」とのこと。

いかにも高所得者といった感じの顧客がのんびりと商品を見て回っている。必要なものを買いに来るというよりは、面白い商品を見に来る、ライフスタイルの参考にするといった目的が多いということである。オーガニック製品なども目立った。
実際、India Brand Equity Foundationによれば、インドのラグジュアリー市場は2017年に238億ドルであったのが2018年末に300億ドル規模に達するとみられており、急速に発展してきている。

最近のウォールストリートジャーナルの記事で、「Amazonのインドにおける最大の敵はキラナである」というような記事が出たが、確かにキラナの便利さはインド人にとっては欠かせないもののようである。一方で、上記で紹介した新しいタイプの小売店のように、新しい角度で切り込むことで新市場を開拓できる余地はまだまだ残っているといえよう。

執筆者のご紹介
福田 さやか

福田 さやか

東南アジアに特化した高等教育支援NPO法人、慶應義塾大学大学院助教、国際会議支援会社、アジア専門のコンサルティング会社を経て株式会社レインを創業、後にgram参画。

約20年に渡り海外に特化した経済調査、市場調査プロジェクト、イベント、コーディネーションなど豊富な経験を有す。

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