シリーズ 成長市場で勝つ(6) ~インドネシア教育マーケット参入のポイント~

インドネシアの教育環境は、メディアや文献など通した情報により一般的には遅れていると感じているかもしれません。しかし実際は政府が非常に力を入れていたり、教育現場では先進的な教育プログラムを提供するなど非常に優れた教育環境が整いつつあります。

今回のコラムではそのようなインドネシアの教育環境やマーケットについてお届けしたいと思います。

 

インドネシア教育業界

インドネシアにおける学校教育は日本同様6・3・3・4年制度であり、学校を管轄する省庁は、日本とは違い教育文化省及び宗教省で構成されます。
学校数も非常に多く、大学を除く学校数は37万校あり、その内小中学校が約22万校存在し、また、省庁管轄外にあたるインターナショナルスクールも100以上存在します。

インドネシア政府は特に教育に力をいれており、中央政府における教育予算は実に416兆ルピア(国家予算の20%に相当)、また地方政府においては合計で約25兆ルピアにのぼり、
また、この教育予算のうち学校運営用助成金BOS((Bantuan Operasional Sekolah)が学校運営で発生する費用として使用されるものであり約45兆ルピアにのぼります。

教育システムは教育大臣が基準や内容を決めることなり、実際の運営及び管理は地方政府の役割となる。現在は2013年に教育カリキュラム(2013年度カリキュラム)が施行され、これに沿って教科書及びその他関連教材が作られています。

教育内容は、先生が延々と話すタイプの知識提供型で、また全国統一試験によって進む学校がきまるため試験対策が一般的です。教育機関は学校だけでなく、民間の塾なども存在するがそのほとんどは同様に試験対策のためのプログラムを提供しています。

 

変わる教育現場

一般的なインドネシアの教育環境は、おそらく皆さんが想像する所謂アジアの教育環境と一致しますが、この一般的な環境から脱却する流れも出てきています。
特にジャカルタの小・中学校では、全教科英語授業となっていたり、教材のデジタル化が進んでいます。
また、学校を運営する校長並びに理事会、また学校事業に参入する数多くの企業などの教育者たちは、一般的なインドネシアの教育に疑問をもち、かつ高度な教育論を持ち合わせた方々が多く、例えば、2013年度カリキュラムは最低限にとどめ、知識提供型の授業をやめ、独自の教材やプログラムを用意し、生徒が考える体験型教育を推進したりデジタルコンテンツをいち早く取り入れ最新のツールを使って教育をするなど工夫を凝らしています。
また、その考えにインドネシア政府も確りとフォローする制度を併せ持ち、どんどん教育が充実するといった流れになっています。
実際訪問した小中学校などは、政府予算により生徒全員がタブレットを使って授業をしたり、無料のグーグルVRコンテンツを活用したり、芸術、実験、体験学習など独自の教育プログラムを惜しみなく発揮するなど多様な様相を呈しており、日本の小中学校より進んでいるのではないかといった印象を受けたのが本音です。

 

教育マーケット参入のポイント

商材について、これら教育マーケットに提供できる製品・サービスは無数にあると考えます。教材、副教材、器具、コンテンツ、サービスなどにカテゴリーされる詳細をあげればきりがないでしょう。
受け入れられるには最新、独自性といったキーワードがポイントです。
教育は先進国が進んでいるだろうといった考えでひと昔まえのコンテンツを持って行っても通用しない。最新の設備、器具、コンテンツで勝負しなければ参入することは難しいと思われます。

パートナーについて、インドネシア業界プレイヤーは大きく分けて出版社、教具メーカー、リセーラー、ディストリビュータ、独自コンテンツを有するサービサーなどに分類されます。
例えば、出版社ならGramedia社やEarlanga社など、教具メーカーならPudak社、リセーラーはMuntaribooks、ディストリビューターは無数に存在する。
上記は一例ですが、本来それぞれの業態によって役割は違いますが、一般的にはすべて出版社として認識されているため、誤ったパートナーを選んでしまう可能性もあります。もし間違ったパートナーを選んだ場合、おそらく展開スピードや規模は得られません。確りと自社のコンテンツとパートナーの事業ドメインをすり合わせ選択しなければなりません。
パートナーに関連して、独特な商流の存在も認識しなければなりません。
先にもあげた英語教育、デジタル化といった流れはシンガポールから来ています。
インドネシアに流通する最新の教材及びコンテンツはそのほとんどがシンガポールから来ており、場合によってはシンガポールの出版社等と組むことによってうまく参入できるケースも想定できます。

最後にターゲットです。皆さんが提供するサービスは誰に向けて提供するサービスなのかが重要になります。
学校に提供するものであってもその予算は政府なのか、学校なのか、生徒の親なのか、ドナーなのか、これによって組むべきパートナーも変われば、必要な準備も変わってきます。
例えば、政府の予算を狙ってサービスを展開する場合、かならず中央もしくは州政府の承認を得なければなりません。そうすると組むべきパートナーは、例えば教科書作りをしている出版社で且つ政府と非常に強いコネクションを持つキーマンがいることが条件になってきます。政府予算を狙ったサービスは、もちろんマーケットは大きいがそのための準備に非常に時間がかかることを覚悟しなければなりません。

今回はインドネシアの教育マーケットに関してお届けしましたが、インドネシア学校教育の現場は一部ではかなり進んでいるといった印象を受けています。
おそらく皆さんが持つインドネシア教育マーケットの印象も違うでしょう。
巷にあふれる情報だけでは正確なマーケットを知ることができません。特に新興国では日々情報が更新され、また受け取る印象も人によるため正確な情報をつかむことが大変です。
もしインドネシア教育マーケットに参入しようと思うのであれば、皆さんのサービスをマーケットにあてながら一次情報を収集し判断することが最終的にポイントとなるでしょう。

執筆者のご紹介
谷村 真

谷村 真

株式会社gr.a.m 代表取締役

1976年8月生まれ。2002年から15年に渡り海外特に新興国へ進出する日系企業及び既に進出している日系企業を対象に調査・コンサル業務を提供。
産業調査分野において大企業から中小企業まで数多くの調査・コンサルプロジェクトに携わり、グローバルビジネスにおける第一線で活躍。
自治体・各種団体・企業セミナー等実績多数。

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