4.122018
シリーズ 成長市場で勝つ(3) ~インドにチャンス!「GST導入」によって変わるインドビジネス~
2017年7月1日インドにGSTが導入された。
GSTとは、Goods and Services Taxの略で物品やサービスに掛かる税金である。
インドには国税と収税が存在し、その間には複雑なルールが存在する。
現在導入されたGSTはその複雑なルールである物品税、付加価値税、サービス税など間接税を税率は5%、12%、18%、28%の4段階に定め国税や州税間で統一するものである。
インド市場には複雑な税制度やそれに伴う煩雑な物流手続き、そこに加え賄賂など多くの問題を抱え、インドに参入している企業にとってはインド市場における展開の大きな壁に、これからインドに参入を考える企業にとっても中々踏み出せない原因になっていた。
以前のコラムにも書きましたが、インドは「メーク・イン・インディア(インドでモノ作りを)」や「スワッチ・バーラト(クリーン・インディア)」、そして「デジタル・インディア」と3つの政策を掲げモディ政権が誕生し様々な改革に取り組んできた。
特に経済改革はモディ政権の真骨頂であり、2015年の直接投資の規制緩和、2016年の高額紙幣の廃止、新紙幣の導入などは記憶に新しい。
今回のGSTの導入は州ごとにバラバラだった間接税の税率やルールを統一することで、州や都市によって全く違った国のように感じられたインド市場を単一の巨大マーケットとして捉えられるきっかけとなり、我々日系企業にとって身近に変化を感じられるインド経済改革の目玉であるといっても過言はない。
現地メンバーに聞くところによると、この制度改革成立にインドらしいエピソードがついてきた。
この目玉改革のポイントは、憲法の改正によって成り立っていることである。
インドの連邦議会は2院制で非常に複雑な構成ですが、簡単に説明すると、国民から直接選ばれた下院議員と各州議会の選挙を通じて間接的に選出された上院議員で構成されている。現在の連邦議会はインド人民党(BJP)などが下院議席の6割以上を占めるが上院での議席は2割にすぎない。つまりいわゆるねじれ国会となっている。
このねじれた構成であって様々な問題を抱えるインドが憲法を改正し導入する制度は、ある一定の合意を得なければ今回のような政策は実現しないものであり、タフなネゴや調整があった大変な改革であることは容易に想像できる。
それでもなお制度が合意されるその目前で、合意形成に則って物事が進められたはずなのに、最後結審のタイミングで案の定賛成しないものが現れるようなのです。今回も3名程度反対がでてきたようだ。
これは、物事がある程度進められた中で反対をすれば結果的に有利な条件を引き出すことができるというのです。まさにインド人の利己主義的な側面や交渉好きな性格が現れているように思われる。
GST導入による我々日系企業への最も好影響だと思われるポイントは、コスト増になってきた州をまたぐ取引の際に発生する税金の撤廃とそれによる物流効率化によるインパクトだと思っている。
今まではこの間接税に避けるために多くの企業が各州に倉庫を設け、在庫の移動で対応してきたが、今後はこの倉庫間移動にもGSTが課されることから倉庫の集約などが進み、また倉庫集約を行うことで州をまたぐことによって発生していたペーパーワークや輸送時間、そこに付随した賄賂なども減少し、様々な側面でポジティブな影響を及ぼし物理的・経済的な効率化が進むでしょう。
今インドは大きな改革の最中にある。今まではそれこそインド市場は税制度も物流もそれに付け加えヒトも複雑そうで難易度が高いと感じていたと思いますが、我々のビジネスに照らし合わせ好影響を及ぼす機微をいち早く捉え、誰もが苦戦していたインド市場でチャレンジするタイミングが来たのではないでしょうか。
谷村 真
株式会社gr.a.m 代表取締役
1976年8月生まれ。2002年から15年に渡り海外特に新興国へ進出する日系企業及び既に進出している日系企業を対象に調査・コンサル業務を提供。
産業調査分野において大企業から中小企業まで数多くの調査・コンサルプロジェクトに携わり、グローバルビジネスにおける第一線で活躍。
自治体・各種団体・企業セミナー等実績多数。